この前ネットを見ていたら、松任谷由実の生歌が下手くそだとあった。そういえばこのところよくテレビに出ている。主題歌を売りに番宣していたTBSのドラマが面白い。全盛期にはライブもしくはレコード盤を通してしかお目に掛かれなかった類の人だ。もう歳なんだから歌えなくてもいいじゃないか。彼女の歌はもともとあんなもんだ。そりゃ山本潤子のほうがよっぽどうまい。でもね、うまいだけなのだ。それだけでは困るのだ。オヤジ達の世代の多くはユーミンの楽曲に関して彼女に優れた歌唱力の発揮を求めているわけではないのである。
今年読んで面白かった本で、村上春樹の旅行記がある。この人はある時期、海外を転々としながら仕事をしていた、それらの場所場所における滞在中の記録だ。著者いわく旅行記とかではなく単なるスケッチだと。だから天気や衣食住の記述が延々続く。ところがこれらの累積に接していると、そことなく村上さんの人となりが感じられるような気がするのだ。基点にしていた滞在地はイタリアのローマだといった。そこから北部にあしをのばした、とある地方のワインがうまいと著者がいう。感化されやすいので買ってきた。荒井由実が16の頃遊び回っていたといわれるイタリアンレストランも同じ名である。ここらあたりのことは小林麻美に歌わせているらしい。ぜひ入手して聴いてみたいと思う。
狭く浅い指向の中でたまにこのような同期事象に出会うとわたくしは、にやーとうれしくなる。しかしユング先生によればあーたそんなものシンクロニシティではござーませんざんすとおっしゃるだろう。村上さんの旅行記の本とユーミンのアジトにはたぶん関連は見いだせない。瓶のぶどう酒の実力と知名度がそうさせているのだろう。