名勝桂浜が観光地として今よりずっとにぎやかだった頃、場内のスピーカーから、「お急ぎ~ください お急ぎ~ください」と施設への入場を誘うおっさんのダミ声が響いていたのを覚えている。記憶に積層があるのならば、音や匂いのそれは意外と浅いところにあるのではないかと思う。
どこそこのお店で食べたあの何やらはとてもおいしかったなどと、食い物のしかも味の記憶を留めている人がいる。うちの奥方さまもその一派だ。私も真似てみたいが残念ながら味覚を保持する能力がない。味覚能力自体がかなり怪しくもある。
このお店はそんな私のお気に入りである。前段を踏まえればお店にとっては要らぬ客かも知れない。お肉のほうは当たり前に高価なのでもっぱらお惣菜派である。普段でも客足は絶えないが、最近ではもうそれはそれはの長蛇の列といった様相を呈している。
かなり厚めの衣、これでもかとばかりに詰まり詰まった中身、ここのコロッケの事を憶えていたいと切に思う。
4月16日まで
お急ぎ~ください お急ぎ~ください