何年か前にその頃県外の大学生だった子どもと連絡が取れなくなったことがあった。向こうに知人でもいればいいがそうでなければメール不通電話不通となれば残る手段は限られてくる。手元の仕送り通帳の出金記録をにらみながら私はその日の最終か明日の始発で現地へ行こうと決めた。
公共交通機関を利用して遠出する際に私は事前に道筋や時間や連絡先などを調べて自前の旅程表を紙に書いて作って秘かに持参する。しかしこれには大きな欠点がある。それは事前の作成時間が必要なことと調査外の事態には対応出来ないということである。
何ヵ月か前に奥方様と話しをしていて興味深い話しを聞いた。テレビ番組で見たらしいのだがそれによると中国ではホームレスのおっちゃんもモバイル端末を持っていてほどこしを受ける際にQRコードを掲示して金はこれに入れてくれと誘われるんだということだった。なんということだ。世界はそこまで進んでいるのか。
私は拙記事で時々自分のIT事情を嘆くことがある。それは隠れた願望であり本音の裏返しでもある。ここにきてついにというかスマホを買った。以前3G電波と添い遂げるといった。裏切ってすまない。所詮その程度の人間だ。なんとか世の中について行きたい。何週遅れでもいい。濡れ落ち葉でも金魚のフンでもかまわない。
あれは何年か前のちょうど今頃だった。私が時刻表を買った夜、奥方さまの携帯電話だったか、とにかくうちの電話を鳴らしたのは件の尋ね人だった。