子ども達が小学校時分、数ある学校行事のなかで私達親世代としては馴染みのないものがあった。二分の一成人式と名付けられたそれは、メッセージを発表したり皆で歌ったりと云ったまあ年齢相応の新作イベントだったと記憶している。
子ども軍団隊員k、彼は幼少の頃から人一倍小柄だった。なんとか見映えがするようになったのはここ数年のこと。縦列の真ん中から前の方などと云う曖昧なポジションではなく、最前列が定位置だった。判りやすいが、当人は集団の中では悔しい思いをたくさんしたろうと思う。やがて彼はサッカー少年になる。大きいお兄ちゃん達の様に、四角いエナメルのスポーツバッグを背負って練習に行きたいと云い、オヤジは当時のジュニアサイクルにリアキャリアを装着したのだった。子ども達の習い事の世界では、送迎はおおむね親の仕事だった。丁度今くらいだろうか、日も落ちかかった冬季の夕暮れ、毎度親がボクシイやステップワゴンで自転車ごと丸々積みに来てくれるチームメイト達を横目に羨ましく思ったのだろう、うちは何故友人達の様な車ではないのかと云われたものだった。オヤジは済まないとは思わなかった。
うちに自転車が積めるワゴン車がやって来たのは三年前だった。約一年申し訳程度に彼の活動のサポート役を務めた。やがて彼は進学のためうちを離れた。あの時の少年の乗り物は、現在では原付スクーターや自動車に置き換わった。自動車の方は初心者にはいささか図体が大き過ぎて、取扱いに難儀している様だ。十年前に羨望の眼差しを向けた車である、君は今やフロントシートの住人だ。オヤジはシートポジションメモリ機能が欲しいと思う。背後のカーゴルームには現在、済まないけれども積むものはない。成人おめでとう。君のリアキャリアに君はこれからどんな荷物を積んでゆくのだろうか。
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