靴は消耗品だと思っている。NIKEの何番ですよと云った絶版スニーカーをコレクションする方の想いに添える能力は残念ながらわたくしにはない。道具はいくら気に入って使っていてもやがて履歴扱いになれば徐々に彼方に忘れ去られるのが定め。しかし、印象に残る記憶と云うのは少しくらいならあったりする。点々と想い出してみる。
若い頃、当時流行っていたリーガルを買った。チビで短足の私には間違っても似合う代物ではなかったしその重さと硬さには閉口した。元が雑なのでメンテもせづ履き放しだった。数年でローファーを数本潰すような履き方だった。いつ頃からか履かなくなってしまったが境目は記憶にない。前置き冒頭から割り切ったような論調だが実態はそのようなものではない。使用を停止した靴は自然に保管庫に溜まる。やがて何ともならなくなり、時にエイヤアと大整理する。数年前にかろうじて手元に残っていた黒のプレーンを勢いで処分してしまい後悔した。足で稼ぐ昔ながらの営業業務ではお洒落具合は考課されなかったが、お得意先に日参する未熟な会社員の足にそれは次第に馴染んでいったのだった。安い軽い速い今どきのビジネス靴とは一線を画した革靴だったと思う。不変が売りのブランドゆえ現在においてもあの頃と同じローファーは入手可能だろう。いやもう老頭児なのでここはお洒落にブラウンのウイングチップではなどと買いもしないくせに妄想だけは勇ましい。近々でリブに行ったのはもう数年いや十年以上前だったろうか。その時にはメレルの靴が欲しくて探しに行ったのだが結局買わなかった。先日高新でリブロード閉館の記事を目にした。入れ物が無くなればこのように記憶を呼び出す機会も減っていくのだろう。去るものは日々に疎し。
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